読書録

”共通了解”のための哲学

「政治哲学という分野を研究していた」と話すと、その反応はおおよそ次の二つで、「政治に関心があるんですね」、あるいは「哲学に関心があるんですね」のいずれかだ。一般の人にとって「政治哲学」という聞き馴染みのない二つの熟語の組み合わせは、たいて…

想像力と有限性-『想像力』メアリー・ウォーノック

今、私の目の前にはパソコンとテレビがある。テレビではニュースで中年の女性が泣いている。その涙と表情をみて、私は女性の気持ちを「想像」する。 「想像する」という行為は、人間社会において当たり前のように行われている。当たり前でありながら、しかし…

理性主義からの解放を目指して-『詩としての哲学』冨田恭彦

「哲学とは真理の探究である」、そう理解している人は多いのではないか。古代ギリシャから西洋近代において、哲学の至上命題は、「理性によって絶対的な知としての真理を捉えること」であった。そこには不変なる真理というゴールが設定され、その時代、その…